一日一首~うたかたに恋の歌語り~ -2ページ目

90 忘れないで


にくんでもいい私を忘れないであなたの中に生かせておいて




いちばんかなしいのは 忘れさられること


愛することの 対極にあるのは
にくしみではなく 無関心


愛されること かなわなくても


にくむことで
わたしを 忘れずにいてくれるのならば


どうぞ いくらでも
にくんでほしい


どんなかたちでもいい


あなたの中に
生きていたい わたしがいる


それも かんたんではないのかな


だって 


愛するからこそ にくしみも
うまれるのだものね




さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います





89 きぬぎぬの

 

ともに過ごした夜が明けて別れる朝のつらさよ次はいつ会える

 

 

 

きぬぎぬの別れは

 

なぜ こんなにも つらいのだろう

 

ともに過ごした時間が
しあわせなものであれば あるほどに

 

別れの朝が つらい


 

この次
いつ会えるとも知れぬ ふたりであれば

 

それは なおさら


 

せめてすこし あとすこし

 

あなたのぬくもりを 感じながら
まどろんでいたい


今すこし すこしだけ

 

明けはじめた空よ
ふたりの時間を 止めていて

 

 

 

さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

 

 

 

 

 

88 錯覚

 

若い君の錯覚と知りなおつづく錯覚であれと願うかなしさ

 

 

わかっているの

 

あなたが わたしに魅かれているのは
あなたの 若さゆえの情熱で

 

わたしのなかに 理想の女を みいだそうとしているから

 

なのだと


母性の愛を あなたは わたしにもとめる

 

あなた自身も わたしを まもろうとする

 

それが 愛だと
あなたは 信じてうたがわない

 


でもね

 

いつか あなたは 気づいてしまう

あなたにふさわしい ほかのだれか の存在に

 

そんな日が かならずやってくる


錯覚でも いい
このまま あなたに 愛されたい

 

このまま あなたの
錯覚が 一生続きますように

 


さもなくば 今すぐ

あなたのもとから 消えてしまいたい

 


年上の わたしの

かなしい 願い

 

 


さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

87 いぬに なりたい

 

犬ならばじゃれついても叱らないよね吾も君の犬になりたい

 

 

 

いぬになって
あなたに 無邪気に じゃれついて甘えてみたいよ

 

わたしが どんないぬでも
あなたは よしよしと あたまをなでてくれるだろう

 

わたしが どんなオンナでも
あなたは よしよしと 受けとめてくれるんだろうか

 

それは ないよね

 

でも わたしが いぬなら

 

じゃれて甘えても ゆるしてくれるよね
笑って こたえてくれるよね

 

あなたがさびしいときは
ずっと かたわらに いてあげる

 

けっして そばをはなれない

 

どこへだって ついてゆく

 

あなたの いぬに なりたいよ


だけど 首輪は つけないでね

 

そんなものを つけなくても

 

わたしは あなたのそばをはなれたりしないから

 

 

 

 

さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

 

 

 

86 それは ひと夜なれど

 

 

今夜だけあなただけの私になろうこのひと夜はされど永遠

 

 

 

であいが 遅すぎた などとは思うまい

 

であえたことに 感謝しよう

 

であえて いま ここに
ふたりが ともに在ることに

 

このまま にどとあえないのだとしても


できることならば
こよい 一生ぶん 
語りつくそう  愛しつくそう

 

それは ひと夜 だけれど

 

ひと夜 だからこそ 
永遠の ものにできる

 

永遠に 輝きつづけることができる

 

わたしと あなたのなかで

 

わたしと あなたの ひと世のなかで

 

忘れられない ひと夜になる

 


 

 

 さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

 

 

 

 

 

85 さくら~いちねん~

 

あの木のさくらが咲いて散りまた咲くこのみじかくもながきいちねん

 

 

その1本のさくらの木を 
毎日 眺めては通り過ぎる

 

わたしに
その年の さくらが咲いたことを
毎年 教えてくれる 木

 

  はやく はやく 咲いてほしい
  今か 今か と 待ちこがれるのは
  はやく あのひとと お花見がしたいから

 

  もうすこし もうすこし
  咲くのを 待っていて と願うのは
  遠いところから 
  もうすぐ帰ってくるあのひとと
  この地で おなじさくらを
  一緒に 愛でたいから

 

  いっそ 今年のさくらが
  咲かないままだといい

  そんなことを 思ったこともあった

 

  春がくれば 行ってしまうあのひと
   
  さくらが 咲かなければ
  春が いつまでもやってこなければ
  冬のままなら
  
  あのひとも 行かなくてすむ
  そんな 詮ないことを考えたり


その年 その年
いろいろな思いで そのさくらの木をみつめるわたし

いちねんは ながくて みじかい


そして かならず めぐりくるこの季節

 

さて

 

今年の さくらは

 

今年の わたしは

 

そして 来年は…

 

さくらは かならず
来年もまた 咲いてくれる

 

そして あのひとと わたしも
かならずまた めぐりあう
  

 


さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

 

 

84 さくら~花冷え~

 

 

花冷えの季節にやさしく吾を守る君がくれたシルクのストール

 

 

さくらの花も 咲きはじめた 春


けれど 風は まだまだつめたい

急な 冷え込みが くることもある

 

そんなとき

あなたがくれた 春いろのストールは
ふわりと やさしく わたしを包みこみ
つめたい 風から まもってくれる

 

このまま

春の風と たわむれていたいような

 

木々のみどりに とけこんでしまいたいような

 

そんなきもちに させる

 

まるで あなたの腕に 
つつまれて いるように 

 

 

 
さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

 

83 さくら~さくら前線~


会いたい君に会うために風になるさくら前線とともにわれも



さくらを咲かせながら 春を運ぶ 風になりたい


君のほほを やさしくなでる 春の風になりたい


君に会うために 春一番の 嵐となってかけぬけたい


さくら前線とともに わたしも君のもとへ とんでゆきたい


誰よりも会いたい 君のもとへ 今すぐに




さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います



82 さくら~さくら咲く日~



つぼみふくらむさくらよさくらこがれるまちびとこいこいはようこい



さくらが咲く頃
帰ってくるよ と言った人

こよなく 恋しい人

開花は 遅れてもいい
かならず さくらは咲くのだから

その日が 遅れてもいい
かならず あなたが 帰ってくるのなら

わたしは その日を待っている

さくら 咲く日を

待ちびと 来たる日を

その日は もうすぐ 





さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います





81 徒花(あだばな)



実をむすぶことのない精うけいれるわれのかなしさ君のかなしさ



わたしに ぽっかり あいた 穴

いのちをはぐくみ うみだすちからを 
永久に うしなってしまった 
なごりの 傷

その傷を その穴を
君は いとおしんでくれる

けれど 

どんなに 熱い涙を流しても
どんなに いきいきとした精をそそいでも

もう もどらない

もう うごかない

永久に 呼吸をしない場所

君は わたしのかなしさを
わたしは 君のかなしさを

抱きしめ たがいの手をとって
生きてゆくほかはない

この かなしさも 空虚さも
いつか なんでもないことのように
癒えるときがくるのか



 

さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います