85 さくら~いちねん~ | 一日一首~うたかたに恋の歌語り~

85 さくら~いちねん~

 

あの木のさくらが咲いて散りまた咲くこのみじかくもながきいちねん

 

 

その1本のさくらの木を 
毎日 眺めては通り過ぎる

 

わたしに
その年の さくらが咲いたことを
毎年 教えてくれる 木

 

  はやく はやく 咲いてほしい
  今か 今か と 待ちこがれるのは
  はやく あのひとと お花見がしたいから

 

  もうすこし もうすこし
  咲くのを 待っていて と願うのは
  遠いところから 
  もうすぐ帰ってくるあのひとと
  この地で おなじさくらを
  一緒に 愛でたいから

 

  いっそ 今年のさくらが
  咲かないままだといい

  そんなことを 思ったこともあった

 

  春がくれば 行ってしまうあのひと
   
  さくらが 咲かなければ
  春が いつまでもやってこなければ
  冬のままなら
  
  あのひとも 行かなくてすむ
  そんな 詮ないことを考えたり


その年 その年
いろいろな思いで そのさくらの木をみつめるわたし

いちねんは ながくて みじかい


そして かならず めぐりくるこの季節

 

さて

 

今年の さくらは

 

今年の わたしは

 

そして 来年は…

 

さくらは かならず
来年もまた 咲いてくれる

 

そして あのひとと わたしも
かならずまた めぐりあう
  

 


さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います