一日一首~うたかたに恋の歌語り~ -8ページ目

31 ズブロッカ



こんなクセのあるヤツだがちゃんとぴったりの相棒もいるズブロッカ



ズブロッカベースのカクテル
ってあまりきいたことがない。
ショットグラスでストレート、というのみ方しかしたことがなかった。
つよいお酒だけれど、さくらもちのようなあとくちが甘いズブロッカ。

なにかを混ぜたりしたら、
このほのかなあとくちも香りも、とんでしまうのかも知れない。
ストレートでのむのがいちばんなんだろうな。
そう思っていた。

けれどある日、
さまざまなカクテルをゆっくり楽しんでいた私たちは
ちょっといたずら心を出した。

彼がバーテンダーのカッコいいおにいさんにたずねる。

「ズブロッカの味や香りをこわさないで
 混ぜて作れるカクテルって、なんかあります?」

バーテンダーのおにいさん、

「ああ…ありますよ。
 ボクはこれがけっこうすきなんですけど」

と、さっと作って出してくれた。

OOで割っただけの、シンプルなカクテル。

のんでびっくり、
ちゃんとおたがいの味と香りが生きていた。
それでいてのみやすく、いいハーモニーをかもしだしているカクテルだった。

あの 自己主張のつよそうな、
強烈な個性のズブロッカに合う相棒もちゃんといたんだな…

そのクセや個性をこわさず生かしあえる存在。

私たちも そうだといいね。 そうなりたいね。




さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

30 鏡



ぶつかることの多きわれらは互いの鏡きらいきらいでもすき



「ケンカなどしたことがない」
ほどホントに仲のよい人たち
(カップル、友人どうし)
もたしかにいるだろうけれど

ぶつかりあいを避けるがための
「ケンカなどしたことがない」
というのは 危険な面もある

私は ほとんどケンカをすることもなかった人との
関係が完全に決裂したことがある

「ケンカもできない」関係だったのだろう

いさかいをすれば傷つくし 傷つけてしまうし
言うんじゃなかった なんでこうなるんだ
と思うこともあるけれど

だからつい なんでもないふりをして
ぶつかりあいを避けて
でも心の中には不満をためてゆく
そんなことも多いね

よくよく相手の言葉を素直に受けとめれば
そしてこちらも相手にわかってもらうために
素直に言葉をつくせば

おたがいによりよく相手を知り 自分をも知り
いっそうかけがえのない存在どうしになってゆく
そんな関係もある

ケンカしたっていいじゃない

ケンカできるほど 正直になれる相手
本気でぶつかることのできる相手なのだと思えば

そして そんな自分を本気で受けとめ
同じようにぶつけてくれる相手なのだと思えば

こんなありがたい存在の人はいないよ

そしてぶつかるたびに
関係を終わらせようとするのでなく 育ててゆけば

「もうケンカをする必要もないような」
本当に理解の深まった 
たがいになくてはならない存在のふたり
になれるかも知れないよね




さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います


29 にがきこと



にがきことどう伝えてもにがきことシュガーコートにそっとつつんで



どんな言葉で言おうとも どう伝えようとしても
苦い現実
変えられない残酷な事実

別れであったり

親しきひとの死であったり

自分やだれかの病であったり

なにかの宣告や かなしいしらせ

ひとは生きているあいだに
いったいいくつのそんな現実を
誰かから告げられたり
誰かに告げたりするのだろう

どう伝えようとも
さけられない驚愕 かなしみ 怒り 涙…

うそはつかないで
けれどせめて
いくばくかのやさしさで包んで伝えよう

たとえそれが
残酷な事実でも
いいえ そうであればこそ



さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います

28 距離



近くなりたく抱かれたらむしろ遠のくそれならばどうかこのまま



あなたをもっと知りたくて
あなたにもっと近づきたくて

そんな思いのままに
あなたに抱かれてしまったなら

ふたりのあいだで
なにかがこわれる

のこされるのは
もう もとにはもどれないあたしたち

もっと近くなりたかったはずのあなたが
かえって手の届かないところに…

そして さけられない別れが待っている

今より近づきたければ
そしてあなたを失いたくなければ

ずっと
このままでいるべきなのだ

今の距離を まもりつづけるべきなのだ

でもあたしは
ほんとうにそうできるのだろうか



さまざまな恋の風景を歌によんでみたいと思います

27 しあわせなさびしさ



なつかしく思い出すひと会えなくてさびしいひとがいるそのしあわせ



はじめからずっとひとりなら
さびしいとも かなしいとも思うまい

今さむいのは
たしかにふたりでいた頃のぬくもりを知っているから

今さびしいのは
たしかに仲間がいた頃の楽しさを
華やぎをおぼえているから

あのひとに会いたい
あのひとがなつかしい
あのひとに会えなくてさびしい

そんなふうに感じることのできる今の自分は
しあわせなんだ

だけどやっぱりさむいよ さびしいよ



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26 第九



「天使のうたごえで」と師が言う「つもりだけは」の第九ソプラノパート



12月。

街はクリスマスムードにあふれる。
道ゆく人々も あわただしそうで
それでいてどこか楽しげでもあって。

師走の声をきくと、
街のそこかしこで、
あちこちのコンサートホールで聴かれる第九

合唱団のひとりとして、
いつも冬にいちどは歌い、
いちどはホールに足をはこんで聴く第九。

天上の天使の声をめざして歌いつづけて、何年経ったことだろう。

「そんな声では、天使は降りてこない!
 アクマが降りてくるぞ!!」

師にはおこられ、どなられっぱなし。

劣等生のソプラノ一団員…
せめて、イメージだけでも
きよらかにこころ癒す 天上の天使のつもりで…

おお、フロイデ!


大きな苦悩をのりこえたさきにこそ、かぎりない歓喜がある。



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25 バランスオブジェ



あやういけれど揺らぎつつ安定しているふたりはバランスオブジェ



バランスオブジェというものがある。

不安定にみえて
ゆらゆら揺らぎながら、
絶妙のバランスをたもって倒れないオブジェ。

接点がほんのすこしずれたなら、
横から、上から、大きなチカラが加わったなら
すぐにそのバランスは失われてしまうけれど…

ふと
ひととひとの関係にも似てるな と思った。

たえず揺らぎつつ 安定をたもっている関係。

そう
あなたと私も。
身近な彼らも。

このバランスをたもつには
なにが必要なんだろうね。



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24 きかない理由



どんなつもりでキスしたのなんてきかないただ君を受けとめたかった



あなたとかわしたはじめてのくちづけ

夜の川べり
風のさやけさ
遠くにみえる街の灯 ぼおっとかすんでみえた

ただの気まぐれであれ
私に対する好意であれ
もっと深い愛情であれ…
あなたの理由や思いはどうでもよかった

あなたが私にくちづけしようとしても
私がいやなら絶対に拒んでいた

拒まなかったのは
あなたを受けとめたいと思った私がいたから

あなたの理由も思いも問わない
私自身が ただ心からあなたを受けとめたかった

だから あやまらないでね

「おどろかせたかも知れないことはあやまる

 でも キスしたことそのものについては
 絶対にあやまらないよ」

私の心をみとおしたかのように
あなたはそう言った

あなたも自分の意志で私にくちづけた
そして それを悔やまないと言った

そのとき
私がいちばんほしい言葉だったかも知れない



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23 言葉



言葉はこころを伝えるもの?かくすもの?君のほんとうを知りたい



言葉は
ひとがひとに思いや考えを伝えるための
たいせつな手段であるけれど

時には 言葉よりも
しぐさや表情のほうが
それを如実にあらわすこともある
むしろそのほうが多いかも知れない

オトナになるほど
ココロをかくすための言葉を使うことが
ふえてゆくのは かなしいね

必要な嘘も
優しい嘘もまたあるけれど

どこからがウソでどこまでがホントなのか
これまた線をひくのはむずかしい

でも
自分でもむなしくてそらぞらしい気分になるような
心にもないことは
なるべく言いたくないよね

なるべくなら
心と行動が ケンカしてない
自分でありたいよね

そして 相手のことも
できれば「ホントウ」が知りたいな
知って理解に近づきたいな



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22 自然のいのち…その美しさ



さかなも鳥もただ泳ぎただ飛び生きる自分の美しさ知らず



神さまがつくった自然
さかなや鳥、そしてありとあらゆる生きものたちの
姿かたち、色、声の美しさ みごとさ

彼らは
自分の美しい姿を 
自分にしかない美しい色を 能力を
自覚して生きているのだろうか

きっと
そんなことには無頓着に
必死に一生懸命に ただ生きているのだろう
そして死んでゆくのだろう
次なる世代の子孫をのこして

人間も
自分がいま在る場所で
ただ 一生懸命に生きていれば
それだけで美しいのかも知れない

みんな自分の美しさを知らず生きている



さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います