一日一首~うたかたに恋の歌語り~ -9ページ目

21 はじまりの場所



あなたから愛告げられし空にいちばん近い場所忘れ得ぬ一瞬(とき)



無口なあのひとが
はじめて私に思いを伝えてくれたのは
夜景が美しい
都会の高い高いビルの上だった

あのひとは私にそれを告げて
私を忘れるつもりだった

思いもよらない愛の言葉に
おどろいて
早い鼓動がやまなかったことをおぼえている

そのひとが無口なことには
それからあとも変わりなかったけれど

その日から
時間をかけて おたがいにちょっと努力もして
そのひとと私は なんでも話せる友人になった

ながく顔を合わせていないけれど
その高いビルを目にするたびに
あの日の胸の高鳴りが
きのうのことのように よみがえる



さまざまな恋の風景を歌によんでみたいと思います

20 メール



メールがあってよかったね会えもせず声もきけずでも君はそばに



遠くにいる友人や恋人と
毎日のように会話のやりとりができるなんて
今まで考えられなかった。

心のつうじあった者どうしなら
メールでも相手の口調や表情まで想像できてしまう
相手を身近に感じる。
メールはとてもありがたい存在。

けれど忘れてはいけない。

言葉の中にある感情のニュアンスがうまく伝えあえなかったり
表情がみえなくて
誤解をまねいたりすることもあって

会うこととイコールにはなりえないと。

メールでは伝えきれない行間の思いもある。

なんといったって
会うのがいちばん

メールは、会えないときの二次的な手段。

たいせつな友人に 家族に
いとしい恋人に

会うことができるのなら
顔を合わせることができるのなら

何時間メールで話すよりも
たとえわずかな時間でも

どうぞ会いに行ってあげてね。



さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います




19 そんな愛しかたもある



「帰るな」とは言わぬ君の愛たしかに受けとめかみしめ家路つく



おたがいを
今 誰よりいとおしいと そばにいたいと思うけれど

それがかなわぬかたちの恋もある

なにもかも
ふみこえていこうとすることもできるけれど

あえて それをしないでいることもできる

つきすすむだけが恋じゃない
抱きあうことだけが愛じゃない

おたがいをつよく想うからこそ
ふみこめない距離があることも
また 知っている

そんなせつない 
けれどつよい愛しかたもある



さまざまな恋の風景を歌によんでみたいと思います


18 縁(えにし)



われのそばに在るひとわれを遠くでみまもるひとみな深い縁(えにし)



いつも自分の身近にいて、自分を支えてくれる人。

今そばにはいないけれど、
遠いところからいつも自分を気にかけてくれる人。

もうにどと会えないけれど、
いつも心のどこかに住みつづけている人。

今の自分が在るために、
なくてはならなかった人。

…みんなみんなたいせつな、
自分にとって深い縁をもって生まれてきた人たち。

その多くの人たちのおかげで
いま、自分はここにこうして在る。

感謝しよう。

そして、その人たちがどうか幸せでありますように。



さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います


17 至福のとき



語らずにひとつ部屋にて本を読みうたたねにお茶ふたりの至福



何をするわけでもなく、
ただおなじ部屋で、一緒にいる。

それぞれがすきなコトに熱中しながら。

本や新聞を読んでいたり、
窓から流れてくる風を感じながら、
今日のお天気はなんてちょっと思ってみたり、
うとうとうたたねしたり。

会話をするわけでもなく
静かに時間が流れてゆく。

でも
なんとなくおたがいに満ちたりている。

「ねえ、お茶でものもうか」

「今 おなじこと言おうと思ってたよ」

ふたりがそばにいる空気のやさしいぬくもり
お茶の湯気 あたたかさ。

永遠まで続きそうな、こんな平和さ。

たぶん
これをこそ 至福というのだろう…

と感じている自分がいる。



さまざまな恋の風景を歌によんでみたいと思います



16 正解のない問い



未来に結婚という文字がなければ本気と言ってはいけないの?



男女の恋愛のありかたは
夫婦か恋人しかなくて
結婚を前提とした恋でなければ
本気と言ってはいけないのだろうか。

結婚してしまった男女が異性をすきになったら
すべて不倫や浮気なのだろうか。

結婚という未来がない関係は遊びで
結婚を考えるから本気とよぶの?

遊びでなければ本気で
本気でなければ遊びなの?

性愛をともなったら?
ともなわなければ?
精神性は?

どこからが? どこまでが?

白黒、OXじゃないよね。
関係はその人とその人の固有のもので
比較したり、明確に分類できるようなものじゃないんじゃないかな。

キレイゴト言うつもりも
理想化や正当化するつもりもないけれど

ひとがひとをすきになる気持ちは自然であたりまえで
どうしようもないことだよね。

正解は、誰も教えてはくれない。
自分にとっての、自分たちにとってのこたえをみつけるしか。



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15 君がふれた髪



たわむれに君が触れしをおぼえていたく切れぬままのびすぎた髪



「ずいぶん髪がのびたね」

なにげなくあなたが私の髪に手をのばしてふれた。

「え? そ、そおかな~」

内心ドキドキしているのをさとられまいと
平静をよそおったけれど
心臓がとびだすかと思った。

髪に感覚があろうはずもないのに
あなたがふれた手の感触を記憶しているはずの
髪だと思うと…

あなたのふれたあたりにそっと自分の手をやる。
髪と一緒にあなたの手のぬくもりを共有したくて

そろそろ切ろうと思っていた髪を切りそびれたまま
日が過ぎてゆく。



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14 むかしもいまも



いだかれて君のぬくもり感じつつ死にたき祈り昔人(むかし)もいまも



百人一首に

忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな

という歌がある。

「忘れない」
と言ったあなたの約束が先々まで守られることは難しいでしょう
人の心はうつり変わってしまうものですから

それならば いっそ今日
しあわせな気持ちのままで死んでしまいとうございます

そんな せつなくやさしい女ごころの歌。

時は移り 時代は変わっても
人のこころのありかたは そう変わらないものらしい。

今 私が
やさしい君の腕のなかで
君のぬくもりにつつまれながら
君に愛されているしあわせな今の気持ちのままで
死んでしまえたら…

と願っているように。



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13 甘い秘密



ひとつずつ秘密がふえる君となら悪くもなれるわれにおどろく



あなたに恋をしてから、
ちょっぴりワルイこともおぼえた
あなたに会うためのちいさなウソ いいわけ
ドキドキしながら

今までトモダチにも親にも
ウソついたことなかったのに

その必要もなかったし
ウソなんかなるべくつきたくないし

私ってこんなコだったっけ?
自分で自分にとまどっている

でも
あなたに会うことが
今の私の最優先事項

ワルイことはしていないけど
あなたに会うためにだけ
ちょっぴりウソつきになる私を
神さまどうぞ ゆるしてね

はじめての恋
はじめてのトキメキ
はじめてのウソ
今まで知らなかった
甘い秘密がふえてゆく

あの人しかみえない
そんな一時期が 誰にもあるね



さまざまな恋の風景を歌によんでみたいと思います

12 はぐくんでゆくもの



極上のシチューを作るには長い時間が要るね君と吾もまた



その人との関係は、
はじめからできあがっているものではなく
たがいに相手と関わるなかで育て 築いてゆくもの

日に当て 水を与え その季節にならなければ 
花も咲かない 実もならないように

おいしいシチューを煮込むのには
愛情をこめて 時間が必要なように

私たちの関係も 時間をかけて 
いつくしみ はぐくんでいかなければ

実りあるものになるように…

たいせつな人との関係
たいせつに育てようね



さまざまな恋の風景、ひとの風景を歌によんでみたいと思います